ハチの左官屋さん |
キゴシジガバチの巣作り
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家の土台のコンクリートに奇妙な土のかたまりを発見。それがキゴシジガバチの巣だと分かり、ファーブル気分で娘と観察を始める。わずか3センチ足らずの小さなハチなのに、実によく働く。せっせと泥の玉を運んでは塗りつけるさまは、まさにハチの左官屋さんである。身近なところで見られる、とても興味深いハチである |
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キゴシジガバチって? |
膜翅目 アナバチ科
分布:日本・朝鮮半島から東南アジアをへて、ヨーロッパの地中海沿岸まで広く分布する。
体長:20〜28ミリ
生態:7〜8月頃、泥の玉を運んで、口を使って泥をひきのばし、巣になるツボ(育房)を作る。つぼのなかに幼虫の餌となるクモをつかまえて運ぶ。最初のクモに卵をうみつける。一つのツボが完成すると、次のツボを並べて作り、ツボが完成すると上から泥を厚く塗って覆い隠す。一つのツボの長さ:約30ミリ。ツボの直径:約9ミリ。一つのツボの巣を作るために、泥の玉を33〜49個使い、3個でふたをする。
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キゴシジガバチの巣作り観察日記 |
(1998年8月3日〜9月1日)
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8月3日 曇り 観察スタート |
8月3日
13時11分 |
8月3日
13時14分 |
8月3日
13時17分 |
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新しいツボが作られていた。ツボにフタがしてあった。 |
キゴシジガバチが巣にやってきた。 |
新しい泥を運び、巣の上に塗り付け始めた。 |
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8月3日
13時49分 |
8月3日
13時55分 |
8月3日
14時3分 |
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20数回泥を運び、上塗りをしていた。 |
ツボのふたをあけた。 |
エサのクモを運んでいるようだった。何度か運び、また入り口にふたをした。 |
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8月4日 |
曇
時々晴 |
お天気が悪いせいか、ジガバチの姿を見なかった。 |
8月5日
〜6日 |
晴
時々曇 |
時々巣にやってきて、上塗りをしていた。 |
8月7日 |
晴 |
巣の上にアリが歩いているのを嫌がり、ジージージーという翅音をたてて、口で勢いよく追い払っていた。またニホントカゲが巣のそばを通った時も同じように、音をたてて追い払った。 |
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8月8日 |
晴後曇 |
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入り口のところを残して、つぼが隠れるように全体が上塗りされていた。入り口のふたを手でちよっと触ってみたら、簡単に開いてしまった。すぐにアリが数匹巣の中に入っていったので驚いた。中のクモが目的か。しばらくして、ジガバチがやってきて追い払ったようだ。 |
8月10日 |
晴 |
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回りを塗り固め、入り口も分からないように塗っていた。巣づくりが完了したようだ。 |
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8月11日
〜12日 |
親バチが時々巣を点検している姿を見かけた。 |
8月13日
〜24日 |
親バチの姿は見なかった。 |
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8月26日
8時3分 |
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25日11時頃見ると、上部に穴が一つ開いており、夕方、その下にも穴が開いていた。2匹羽化したと思われる。 |
8月28日
14時52分 |
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3匹目が羽化。4番目に作られたつぼから羽化したらしい。 |
9月1日 |
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4匹目が羽化する。育房は5個作られたと思うが、1匹は羽化できなかったようだ。 |
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ジガバチはたくさんの卵を産まず、一つの育房(つぼ)に一つの卵を産む。巣の一つ一つが独立しているのも、天敵に襲われて全滅することを避けているのだろう。そういえば葉っぱを丸めて卵を産むオトシブミも、一つの卵を確実に成虫に育てる虫の知恵だ。つぼの数は場所によってまちまちである。条件のよい所には、たくさん作るようだ。
ドロバチの腹柄は極端に細い。何故なのだろう。田んぼの泥を丸めているのを見ると、お尻を上に上げて、おなかに泥がつかないように作業している。泥が体につくと、重くなり飛びにくくなるからかもしれない。泥をつかむ前脚をすり合わせているのをよく見た。泥で巣を作るために効率よく進化してきたのだろうか。
親バチは巣づくりをしていない時には、どこで何をしているのだろう。親バチは入口にふたをして、どこかに行って近くにはいない。巣づくりが終わって、何度か点検にくるものの、その後見ることはなかった。別の場所で巣づくりをしているのかもしれない。 |
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近所で見つけたキゴシジガバチの巣 |
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アパートのトイレの窓の上 |
さすがに引き戸の上にはつくらなかったね。 |
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農家の納屋の柱の中 |
上には屋根があるし、雨を防ぐにはいい場所 |
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キゴシジガバチはどのような場所に巣を作るのだろう
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●泥が近くにあること
どの巣の近くにも田んぼがあり、泥を入手しやすいところだった。ジガバチの体の大きさを考えると、泥を運ぶのは大変なエネルギーが必要なはず。きっと泥が近くにあることが、巣づくりの第一条件ではないだろうか。
●高いところには巣を作らない。
見たところあまり高いところには巣を作らないように見える。せいぜい2階くらいの高さではないだろうか。泥の玉を持って、上まで上がるのは大変に違いない
。
●エサが豊富なところ
幼虫の餌になるクモを運ぶときは、つぼの入り口のふたをしないで、ひんぱんに運ぶので、狩りをする場所が近くになければならない。
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その後のキゴシジガバチの巣づくり
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翌年(1999年)、家のそばにあった田んぼが消えて、畑になってしまった。とたんにキゴシジガバチの巣は見られなくなってしまった。すっかりその存在すら忘れていた3年後(2001年)の冬、同じ場所に小さな土の固まりがあるのを見つけた。触るとボロボロと崩れてしまった。多分2個か3個のツボだったと思う。巣づくりを気がつかなかったとは不覚だった。家の土台のコンクリートはジガバチのお気に入りの場所らしい。今年はどうだろう。真夏のカンカン照りが好きなジガバチ、また観察してみたいものだ。 |
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